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心臓血管外科研究紹介①

2021.09.09更新情報

心臓血管外科教室スタッフ、林佑樹先生より研究紹介のコメントを頂きました。

 

【腹部大動脈瘤モデルマウスを用いた高血糖の大動脈瘤進展機序への関与の検討】

腹部大動脈瘤の危険因子としては糖尿病・動脈硬化・高血圧・脂質異常症・喫煙などが挙げられるが、近年の研究で高血糖が腹部大動脈瘤の進行を抑制するという逆説的な報告がされている。腹部大動脈瘤の病理組織学的変化としては、血管壁への脂質の沈着やリンパ球・マクロファージなどの炎症細胞浸潤、中膜弾性線維の構造の破壊、平滑筋細胞の脱落による中膜の菲薄化やムコ多糖類の沈着、外膜の血管新生が特徴的であり、そのいずれかに高血糖が抑制的に作用していると考えられている。

実験方法として、Apolipoprotein E遺伝子欠損マウスを通常餌 (Control) 群、高血糖誘発特別餌 (Hyperglycemia: HG) 群の2群に分けて飼育した後に、腹部大動脈瘤マウスモデルとして管理、数週間後に腹部大動脈瘤の存在の確認、大動脈瘤径の計測、採血を行い、組織病理学的評価を行った。

結果、HG群に比べControl群は瘤径拡大率が有意に高値であった。両群間で収縮期血圧、Total cholesterol, LDL-Cに有意差はなかった。病理学的検討からは、HG群は中膜内の弾性線維の整合性が保たれており、中膜内の酸性ムコ多糖沈着が少なかった。更にHG群では中膜SMCは脱分化型の形質を呈し、外膜の新生血管増生は抑制されていた。本研究はこれまで報告の高血糖腹部大動脈瘤モデルよりもより生理的条件下で高血糖を呈したモデルマウスが動脈瘤拡大に抑制的に作用することを明らかにした。

 

その他の研究紹介:

https://www.nu-cvs.jp/the-study/

 

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